夢話-夢小説の間-





四時間目






 四時間目、お昼休みの手前の授業。集中力なんて皆無だ。
 白粉お歯黒をした変態教師が、前で美術の歴史を語っているけどテスト範囲なんてたかが知れているので、別に聞いても聞かなくても得にも損にもならない。
 ただ、日本舞踊を思わせる話し方が聞いていて至極眠気を誘う。
 お昼を目前にした空腹と、子守唄――と名付けるにはいささか気の引ける――ような教師の声から生まれでる眠気。
 食欲と睡眠欲を一度に体感中だ。ちょっと気持ち悪い。

「くぁ……」

 バレないように小さく欠伸をする。眠たくなる授業をするくせに邪魔されると起こるのだ、あの変態教師。と、

 ぐぎゅるるる……

 何かが聞こえた。
 一瞬で眠気が吹っ飛ぶ。もしや自分の腹の音か、とも思ったけれど、どうやらそれはちがうようで。
 そろり、と音の発信源らしき後ろの席を見れば、非常に微妙な表情の真田くんと目が合った。瞬間、カッと彼の顔が赤く染まる。
 ……ヤツか。
 教師が黒板に字を書いている間に鞄をまさぐる。
 カサリと、独特の手触りに出会い、中からブツを引っ張り出した。
 それを私にしてはファンシーなメモ帳にくるみ、そっと後ろに回した。
 しばらくして、ビニールを破る音がし、次にはカラコロという小さいながらも軽快な音が耳に届いた。
 そしてなにやらビリビリと紙を破く音が聞こえたかと思えば、ぽてっと、机の端にゴミが届いた。ノートの切れ端を丸めたようなそれを開くと、

『かたじけない、感謝する』

 不器用と評判の真田くんにしては意外なくらい、達筆な字が並んでいた。しかも縦書きで。
 思わず口が緩む。
 しわくちゃのそれを伸ばして、分厚い美術の教科書のなかに挟んでおいた。



「ゆーきむら!飯にしようぜ!」
「んぐぅ!?」
「何やってんの、真田の旦那」
「おう、生きてるか、真田」
「……ぬおあぁぁああぁーーっ!!けけけ、慶次殿!なにをなさるかぁああ!」
「へ?」
「せっかく、せっかくいただいた飴を飲み込んでしもうたではないか!!」







 幸村は飴を食べたら絶対飲み込んじゃうと思う。








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2008.12.1