夢話-夢小説の間-





昼休み






 中庭でランチ、と、聞こえはいいけど、開いたのは冷凍食品オンリーのお弁当箱だ。
 お金の節約にもなって簡単便利。
 手を合わせ、もふもふと食す。
 ……ひとりで。
 別に友達がいないからと言うわけではない。
 ただ、いつも一緒に食べる子達が風邪引いて休んだり、憧れの先生にお昼を誘われていたりしてたまたまひとりなのだ。
 誰に言い訳をしているんだか。
 頭のなかでぐるぐる言い訳のようなものを並べ立てながら黙々と手は動く。
 あぁ、中庭の緑がきれい。
 ……教室で食べた方がよかったかと後悔し始めたのは弁当が空に近づいたころだった。
 小さくため息をついて弁当箱を空にする。
 立ち上がったその時、ふわりと、何かが香る。いや、香るとか上品なものじゃなく、臭う。
 発信源はどこだと首を巡らせると、紫煙を吐き出す不良と目が合った。

 ……間。

 彼は苦虫を潰したような顔になり、私はぱちくりとまたたきする。
 ……校内禁煙じゃなかったっけ。いや、違う。未成年が煙草は犯罪。

「Hey、先公どもには黙ってろ」

 先手を取られた。
 怖いので頷いておく。
 ……私が告げ口しなくても口臭で簡単にバレそうなものなのだが。
 共犯にされたら困るので、鞄の中を漁る。
 目的のものはすぐに見つかった。

「多少は、煙草の臭い消えるかと」

 そっと差し出せば、パシリと奪われる。
 ビニールに包まれたそれごと日に透かしている彼。
 ふぅん、と小さく唸るとビニールを破いて口の中に放り込んでいた。

「それじゃあ」
「Thanks、アンタ、組はどこだ」
「すむません、堅気です」
「Ha、class聞いてんだよ、……ああ、class章ついてんな」

 妙に発音のいい“クラス”という言葉が耳に残る。なんて、思っていたら不意に不良が近づいてきて、反射的に体を引いた。
 ――と、ガリ、と飴が砕けるような音。

「Ahan、same his class(ヤツと同じクラスか)」

 ニヤリと笑った彼はとても凶悪だった。
 その笑みに当てられたまま動けずにいる私と、クッと笑みを深めた彼の頭上に予鈴が鳴り響く。
 彼は笑顔のまま脇を通り抜けて校舎へ歩き出した。
 通り抜け様に、

「See you(またな)」

 そんな言葉を残して。
 ……もしかして、飴でも恐喝されるんだろうか。
 補充は切らさないようにしようと心に決めた。







 政宗は絶対噛む。速攻噛む。








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2008.12.1