夢話-夢小説の間-





Trick yet Treat!!





 秋涼やかな日のこと。
 すっぱーん、と勢いよく襖が開かれる。

「Trick yet treat!」

 そのよくわからぬ異国語とともに転がり込んできたのは、 自称異国からやってきたという娘。
 それはいいのだが、いやよくはないが、

「、襖を閉めやれ」

 何も包帯を替えているところに飛び込んでこなくともよかろ。言葉ととも数珠を顔面に投げつけ部屋から追い出す。「ごぶふぉ!?」と女らしからぬ声で吹き飛びよったが、聞かぬふりして念力で襖を閉めた。
 全く年頃のおなごがいきなり男の、しかも我なんぞの醜い男のもとに突如として入るものではないわ。異国の文化かなにかか。けったいな。

「おーたに、数珠、めっちゃ痛い」

 包帯を巻き終え、いつもの装用になったころに襖が弱々しく開き、顔面を抑えた娘が顔を出した。それはそうだ、思い切り遠慮なく投げたのだから。

「当然であろ。して、何用か」
「Trick yet treat」

 問えば花でも咲かんばかりの笑顔で異国語を発した。
 数珠が決まったあたり赤くなっているが、こんな表情を我に向けるのもこの娘くらいよ。

「ヒヒッ異国語はわからぬなァ」

 返答すれば、ああ、確かに、といった顔をする。

「Helloween、知ってる?」
「知らぬシラヌ」
「んー、お祭り。子供がお化けの恰好で、お菓子強請る」
「……ふむ、して、菓子を強請る呪詛がそれか」

 片言の説明から推測を伝えれば、いえす、と笑った。
 確か了承や同意を表す言葉であったか。
 しかし、菓子を強請る祭りとはこれまた異国は変わっておるな。

「普通は、Trick or treat、お菓子をくれないと悪戯する。
 でも、おーたにには、Trick yet treat」
「何が違うか我にはとんとわからぬなァ」

 間の言葉が少々違う、というくらいしかわからぬ。
 さてはて、東の独眼竜ならば分かったであろうか。
 しかし菓子を強請る行事ならば菓子を用意せねばならんなァ。どうせ同じようにこの後三成やら真田やらについて回るのであろ。
 思考していると影が差し、気配が近づいたのでそちらを見やる。

「ッ」

 眼前に広がる小娘の顔。
 抗議の言葉が呑み込まれる。
 狙いすましたかのように音を立てて離れるそれは、にぃっと笑みをかたどった。

「yet、だと、お菓子はいいから、悪戯させろ。
 ヒヒヒッ、ごちそうさま」

 己の笑いを真似て、来た時と同じようにあっという間に去って行った。
 待ちやれ、他の者にも同じことをするつもりか。いや、先ほどあやつ、我には、と言っておったか、特別に嫌がらせかあの小娘。いやしかし、あれは嫌がらせというべきものか。
 ぐるぐると考え巡る内に、どこからか団子を嘆く真田の叫び声が響くのが聞こえよった。
 やれ、遅かったか。

「……、嵐のよう、よな」

 熱がまだ残るそこに手を這わせ、ヒヒ、と喉が音を鳴らした。



























+++あとがき+++
武田のおかんの次にはまったのは、まさかの石田のおかん大谷さんでした。
Trick yet treat は大谷さん、Trick or treatは三成、Trick and treatは幸村(treat)と佐助(trick)と考えて……構成が収まりきらないまま11月になってしまったのでこれだけ上げておきますw

※バックブラウザ推奨





2013.11.02