夢話-夢小説の間-





あなたは神様なのでしょう?





異国から来たらしいというその娘は、われを見るなり顔を輝かせた。
解せぬ。
何事かを異国語で捲し立てられたがわれは異国語などとんとわからぬゆえ、首を振り無視を決め込むことにした。
それから、ことあるごとにわれの周りを付いて歩く。

「おーたに、おーたに!」

どこで覚えたのやら、われの名を囀りながら。笑みをその顔に乗せながら。
わけがわからぬ。
業病を患うわれを人は疎い、虐げ、避けるのが常だというのに、この異国娘の頭には何が沸いているのか。

「やれ、ぬしの頭には花でも咲いておるのか、メデタキなァ」

一度、嫌味を込めて言ってみた。
その娘は虚を突かれた顔をした後、頭の上を触って、「花、ない」と語った。
そういう意味ではない、と説明する気すら起こらなかった。脱力、という言葉を改めて思い知った。
言葉が通じぬ、文化もわからぬ、煩わしさを嫌味を不幸を伝える術がない。
実に面倒なことよ。やはりわれは不幸か。

「何ゆえわれに付き纏う」
「……?おーたには、living god aren't you?」
「…異国語はわからぬ」
「あー、うー…、」

何かを伝えようとしてはいるのだろうが、わからぬ。
暫く廊下に唸り声が響く。
やがて思い至ったかのようにパッと顔がこちらを向いた。

「神様」

花の咲くような笑み、というのはこれを指すのかと言わんばかりの笑顔だった。
そしてやはり、訳が分からない。
神、神と言ったか。

「おーたに、神様、aren't you?」
「……そのようなものではないが」

首を振りながら違うといえば、なぜか笑みが深くなる。
何故、やはり、と言いたげな顔をするのだ、解せぬ。
どうやら娘の中ではわれは神という物の位置にいるらしい。
文句を言ったところで、これには通じないだろう。
三成にそれとなくこれを軟禁するよう仕向けようか。
だがそのような面倒なことに割いている時間などない。
嗚呼、それとも手ひどく痛めつけてやろうか。
いや、

「おーたに?」

われを神と言うこやつをそばに置き、こやつに構い、こやつを孤立させてやるのも一興か。
周りが向ける目に、態度に絶望するがいい。われの手もかからぬ、まこと良き案よ。

「ヒヒッ、ぬしも不幸よなァ、われと一緒よ、イッショ」

笑みを絶やさぬこれの不幸が愉しみよ。






+++あとがき+++
分かりづらいけどハロウィンヒロインとの始めのころの一幕。
途中の英文ですが、大谷さんは現人神だよね?と言っています。浮いてるし、念力使うし人を寄せ付けないし、と。
英語で否定形の疑問文が来た場合、yesが否定、noが肯定になる、といった話を思い出して書いたらこうなりました。
不幸植えつけてやろうとしたけどミイラ取りがミイラになるミイラな大谷さん、大好きです。

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2013.11.17