青春
「でねでね!」
まだ続いてるんだ。
扉を介して伝わる声に苦笑しながら私はお盆を器用に持ち変えて扉をノックしようと手を上げた。
その手が扉に触れるかといったところで、キィ、と扉が内側に開いた。
「どーぞ」
いつからうちの扉は自動ドアに?と思ったら、開けてくれたのは妹の同級生。
明るい髪をして、鳶色っていったかな、校則引っ掛からないのかなぁこれ。
にこやかな笑顔に私も笑顔を返す。
なんにせよ、人当たりがいい子であるのは確かだ。
「ありがとう、佐助くん」
お盆を両手で持ち直して、妹に「入るよー」と声をかける。
ちいさな机にお茶やらお菓子やらをのせていると、
「うわ、お姉ちゃん、ありがとう!」
妹からそんなお褒めの言葉。
いつもそんなこと言わないのに。
「うわ、あんたがお礼言うなんて雨でも降る?」
「ちょっと」
からかってやれば真顔プラス半眼で睨まれた。
ま、そんなところもかわいい。
「すみません、気ぃ使わせちゃって」
そう言ったのは所在なげに入り口で佇む佐助くん。
「若い子が遠慮なんかしないの」
ちゃんとそういうこと言えるなんて偉いなぁ。
私が高校のときは……ま、なかなかいないよね。
ごゆっくりどうぞ、と笑顔を向けて退室した。
ぱたん、と扉を静かに閉めて出ていくさんを見送った。
相っ変わらずきれいでかわいいよなぁ。
ふと、じとーっとこっちを見てくる姫さんに気付く。
「佐助くんさ、まさかとは思うけどうちのお姉ちゃん狙い?」
おぉ、姫さんにしちゃ鋭い。
そう、俺様が誰もが嫌がる姫さんのノロケ話に付き合う理由は単にさんに会いに来たいがため。
俺様って健気。
「悪い?」
「そのあはーって顔ムカつく」
ムッとした顔を作る姫さんに笑って、さんが持ってきてくれたお茶をいただく。
「別にいいじゃん。
あんたは自分のノロケ話をとことんできる。
俺様は麗しの
さんに会える。どっちも幸せって訳だ」
「……お姉ちゃん、彼氏いるけどね」
「うっそ、それマジ!?」
思わず叫んじゃったじゃないか。
てか初耳なんだけど!
「まじまじ、相手は社会人のエリートさんだから諦めたら?」
ずずっとお茶をすするように飲む姫さんがなんか得意気でムカつく。
「そいつ、名前は?」
「……念のため聞こう。それ聞いてどうすんの?」
「事故に見せかけてこr――」
「言うわけないだろ馬鹿ー!?」
+++あとがき+++
青春の一ページ。
実はさんの彼氏は松永さんという裏設定があったりなかったりw
ただ単に佐助に外伝のあの台詞を言わせたかったんですv
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2008.09.07