夢話-夢小説の間-





甘味<貴方








「疲れたー」
「はいはい、あんたいつもそれが口癖だね」
「うん、人生に疲れた」

 ふぅっと吐き出せば、はいはい、と軽く流される。
 何だよ。今日は食いつきが悪い。いつもなら盛大に突っ込んでくれるのに。
 愛がないよ愛が。
 そんなこと口にしようもんならあるわけないだろと丁寧かつ迅速に嘲笑というおまけつきを贈ってくれるに違いない。

「佐助が冷たい」

 むすーっとすれば隣は呆れ顔。

「いつものことでしょうが」
「いつもより冷たい絶対零度だバナナも凍るぜひゃっほーい」

 腕を突き上げてちょっとテンションがヤバイあたしから無言で距離をとるお隣さん。
 視線が痛いです。
 そのまま放置しようものなら無言のまま佐助は去っていってしまうんじゃないだろうか。
 それはちょっとやだな。

「あのさ、悪かったから何かコメント……じゃないなんかとりあえず何か言って」
「なんか」
「ベタな反応!」

 文句を言いつつも、反応してくれたことが嬉しい。
 だってあのままじゃ完璧一人でイタイ人だもん。

「はぁ……」

 佐助のため息と、またやっちゃったとぼやく台詞があたしの耳に届いてないとお思いか!
 ふはははは、甘いな、佐助の声なら千里離れていても聞こえる自信が……いや、千里は無理だけど、とにかくこの距離で聞き逃すはずがないと例えたかったのだ!

「何だよその反応。……佐助に捨てられたら、私生きていけない!」
「道の往来でそういうこと言わないでくれる!?いらない誤解を受けるだろ!」

 道行く人に向かって盛大に叫ぶあたしの肩をガシッとつかむ佐助。
 容赦がない。ちょっと痛いじゃないか。
 でも大丈夫、さっきから町の人たちにこやかに生ぬるい視線で見守っていてくれる。
 だって、いつものことだもん♪

「わざとだもん」
「だもん、じゃないってのったく……」
「あー、疲れた」
「疲れたのはこっちだよ。疲れるなら俺様で遊ぶな」

 ジト目で睨み付けてくる佐助に爽やかに見える笑顔を向けた。

「佐助で遊んでる瞬間は疲れを忘れられるんだ」
「いいこと言ったような顔してるけど言ってること結構酷いから」
「本当なのにー」
「はいはい」

 全然嬉しくない、とため息を吐かれる。
 まったくため息ばっかりだな。疲れさせているのは確実にあたしだけどね!
 佐助にため息つかせていいのはこの世でお館様と幸村とこのあたしだけよ!
 佐助にため息つかせる独眼竜とか、右目とか、その他諸々、そのうち消し炭にしてやるもん。幸村が。

「佐助ー」
「何よ」
「幸村にお団子買ってかない?ついでに一緒にお茶しよう」

 言えば、眉を寄せて肩を落とし、やれやれって顔になる。

「あんたも好きだねぇ」

 団子が。
 という意味なんだろう、たぶん。
 あたしはそれに笑って答える。

「うん、大好きさ」

 佐助がね。
 きっと、絶対気づいてないだろう。
 でも言ってやんねーもんね!

















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2008.12.14