夢話-夢小説の間-





ひとめぼれ








 一目惚れなんて、有り得ない。だって、一目見た瞬間その人のことを好きになるなんて不可能でしょう?
 ……そう、切り捨てていたのは本の数日前のわたし。
 今は誰よりも一目惚れの存在を信じてやまない。
 運命の人。きっとそうに違いない。
 団子屋の看板娘というお仕事を引き受けたその日、無造作な鳶色の髪、鋭い赤茶の瞳を携えてお団子を買いに来た美人さん。
 その人にあろうことか会った瞬間恋に落ちちゃったのだ。しかもなんと、その美人さん、毎日いらっしゃるじゃありませんか!いつもお団子を包んでいるからきっとおつかいか何かなんだろうけれど、いい機会です。恋は押しの一手だ!と、先日この団子屋に寄った旅人っぽいお兄さんが言うので、わたしは頑張ろうと思います。

「いつもご贔屓ありがとうございます!」

 にっこり笑って、いつもよりちょっと多目に団子を渡す。

「どーもー、……いいの?」

 重さでいつもの量と違うと分かったのか、彼は小首を傾げてきた。ちょ、その顔堪らないんですけどっ。
 わたしはニヤけ……いやいや、笑って人差し指を口に当てる。おばさんに知れたら……あはは、給料から天引きかな。それでもいいかと思っているのだから結構重症だ。

「またご贔屓くださいな」
「そ?あんがとね、ちゃん」

 うなっ!?な、名前!?それわたしの名前!!しかもウインクつき!?
 かぁあっと顔が熱くなったのは気のせいじゃなく、目の前の美人さんは、あは、真っ赤だねぇ、とか言う。その上機嫌そうな笑顔もまた素敵で、わたしの胸は高まるばかりだ。

「また明日ね」
「あ、ありがとう、ございましたぁ!」

 後ろ姿に思いっきり頭を下げてお礼を言う。
 あー、もう、わたし死んでもいい。真っ赤な顔をパタパタ扇ぐけどやっぱり熱は引かなくて……。お店の中に戻ったときにおばさんに天引きしとくよ、と言われて改めて熱が引いた。





+++あとがき+++
短いですが、一目惚れネタ。一回しか出ないお名前がツボ。
KGでやろうとして佐助に愛が溢れたw佐助は名前すら出ませんがww

※バックブラウザ推奨





2008.03.26