夏の終わり
夏が終わる。
暑さが和らぎ始め、日の差す時間が短くなる。
空は遠くなり、雲の形状がだんだんと変わりゆく。
この時期になると、いつもあんたを思い出す。
沈む夕暮れを見届け、ゆっくり闇夜が空へ広がっていく様を眺める。
今の俺を見たら、あんたは何て言うんだろう。どんな顔をするんだろう。
もう顔もぼんやりとしか思い出せないけれども、やたらとお人好しで、真っ直ぐで、呆れるくらい自分に無頓着だったのは覚えている。
「佐助ぇえええっ!!」
そう、まるで今の主のような。
あんたの望むそれとは違うだろうが、俺様は幸せだよ。
闇夜に変わった空へ微笑んで、主の元へ駆け出した。
夏が終わる。
日の陰りが早くなり始めて、朝は布団から抜け出しにくくなる。
吹く風から湿気が薄れ、テレビが秋の行楽特集をし始める。
この時期になると、いつも君を思い出す。
窓から差し込む朝日が、じんわりと部屋の温度を上げていく。
今の私を見たら、君は何て言うだろう。どんな顔をするのだろう。
段々と薄れていく記憶に、写真でも撮っておけばよかったと思うのは今さらの話。
でも、飄々とした態度の裏に隠れた優しさだとか、実は甘えたがりなところとか、はっきり覚えている。
「 」
寝ぼけた声に呼ばれて振り返る。
君は隣にいないのは寂しい気持ちもあるけれど、私は今、幸せだよ。
差し込む朝日に微笑んで、呼び声に答えた。
夏が終わる。
沈む日と昇る日を繰り返し、やがて記憶は溶けるように薄れていく。
手のひらで掬う水のように。
少しずつ、少しずつ。
僅かに残った雫が空に消える時が、彼らの夏の終わり――
あとがき
佐助逆トリ帰還後のその後的な。
夢主を呼ぶ人を彼氏にしようか旦那にしようか子供にしようか悩んだあげくの空白w
どちらも自分を呼んでくれる、必要としてくれる人がいて幸せなんだよ。君がいないとちょっと寂しいけどねって話。
・・・・・・今冬ですけどねwww
※バックブラウザ推奨
2010.1.30