夢話-夢小説の間-





属性の話





 自分がもし属性を持てるなら何がいいか。
 馬鹿馬鹿しい考えではあるが、オタクなら誰もが一度は考えないだろうか。いや、考える絶対。考えて妄想して一時間、いやそれ以上に時間を費やせるはずだ。
 さらに場所なんてお構い無し。プライベートな空間はもちろん、通勤通学最中の電車内、授業中の教室、業務中のオフィス、さらにはフリーマーケットのど真ん中でもどこでもいいのだ。だって妄想だから。
 もっと建設的なことに時間を使えばいいものを、と突っ込んでくれるな。それくらいは承知の上だ。

「ねえ」

 呼び掛けられて声の方を向けば、大分暇そうな顔にかち合った。

「なにかな猿飛さんちの佐助くん?」
「……突っ込まないからな。これさ、人来るの?」

 これ、とは、現在絶賛多種多様なものがばらまかれ中の露店のことである。
 公園内には他にも露店を開いているところがあり、所謂フリーマーケットなのだが、戦国時代の人には物珍しいようだ。
 今は店の支度をする人しかいないからの発言なのだろう。

「来るよ。まだ開場時間じゃないもん」

 自分のスペースは既に準備を終え、ぼーっとしながら属性に思いを馳せていたのが冒頭である。
 ふぅん、と興味なさそうに頷く野郎を眺める。

「佐助は闇かな」
「なにが」
「属性」
「…………わかる?」
「うん、風でもいいけどそんなに爽やかでもないし」
「おい」

 オーラというかなんというか。ネガティブな部分まで考え至れるところや、腹に一物抱えていそうなところとか。

「私だったらなんだと思う?」
「えぇー……」

 呆れた顔をされた。
 炎ではないと思う。そんな燃えたぎることはない。萌えたぎることはあるが。
 氷でもないと思う。そこまで冷静ではない。冷めた感性ではあるが。
 風も却下だろう。爽やかさなんて欠片もない。風邪なら引くが。
 雷、もないな。あんな派手に弾けない。某季節某場所では遺憾なく派手に弾けているが。
 光はまず却下。特別なイメージを持っているので特に却下。変とか変わっているが代名詞であるが、特別な、という意味ではない確実に。
 闇が一番近いと思う。が、お化け屋敷を怖がるくらいで闇属性を名乗っていいものか。いやよくないだろう。

「なんだろね」
「想像力……いや、妄想力を持て!」
「やだよ、そんな力」

 はぁ、とさらに呆れたため息をつきやがりました。つまらんやつだ。

「大地とかじゃない?」
「なんだ貴様、どっしりしてると言いたいのか」
「うん」
「その爽やかそうな表情わざとだな!ムカつく!」

 べしっと売り物のぬいぐるみをなければ見事にキャッチされた。
 く、中学ソフトボール部の腕が鈍ったということか。

「まぁ、還る場所って意味でもね」

 にやっと笑ったやつは大層自身の意見がお気に入りらしい。かっこいい台詞のつもりだろうがくまのぬいぐるみを持ちながらそんなこと言われても正直微妙だ。
 大体、還る場所って死んで還るって意味か、さすが闇属性、ネガティブだな。

 …………ん?

 私の属性の話→私の属性=大地→大地=還る場所→……死んで還るの、私のところなのか?自分の世界や主の元ではなく?

「え、なに、今の、口説き言葉?」

 それとも私の考えすぎか?
 くまのぬいぐるみを戻しながらやつは振り返った。

「惚れてなきゃ金も出ないのにこんなとこまで来ないって」

 さらりと言われたせりふに思わず固まる。
 言葉にならない言葉を羅列して、彼に爆笑されて私が再度売り物を投げつけるまで、あと数秒。












+++あとがき+++
休止以前に書いたストックフォルダにあったものです。
佐助やっぱりかっこいい。3になってからおかん<男になりましたよね。
代わりにおかんの称号が大谷さんに移ったわけですが、やはりおかん体質な人は愛い

※バックブラウザ推奨





2013.12.28