夢話-夢小説の間-





日当たり





 薄暗い部屋。
 カタカタカタ、と軽快に鳴る音。
 鳴子より軽く、まるで曲でも奏でているようだ。

「まるで別の生き物みたいに動くよねえ」

 ぴたり、と音が止み、かわりに、

「なにそのモノノケ扱い!」

 少し掠れた不満のこもった文句が飛んできた。
 実際、目の隈は酷いし、顔色も酷いし、モノノケと言われたら、うんそうだね、と納得するしかない顔をしている。
 睨みが鋭くなってきたので、べっつにー?と笑ってやれば、鼻で笑い返される。

「暇なら寝てれば?今、あんたんとこでいう丑三つ時だよ」
「俺様、忍だから平気」
「梟かよ」

 ため息一つついて彼女は立ち上がる。

「いいの、お仕事?」
「まだよくない、あと半分。でも気分転換大事」

 不思議な音をそこかしこから立てながら香ばしい臭いが薫る。確か、珈琲とかいったかな。俺様あれ嫌い。毒みたいな味すんだもん。

「いつまで?」
「出来次第」

 キパッと帰ってきた答え。急ぎの仕事らしい。いっつもギリギリの仕事背負ってる気がするんだけど。まあ、俺様がここにご厄介になってる頃からしか知らないからほんの二十日くらいしか知らないが。

「大変だねえ」
「ふぁ……」
「ちょっとくらい寝たら?そんなんじゃ出せる力も出せないっしょ」

 家の中での仕事のせいか、色は白いし、寝るのも不規則で忍の睡眠時間とタメ張れる。しかも放っておくと飯も食わない。忍の俺様が情をかけて思わず飯作ってやるくらい何も食わない。
 不健康と言う言葉は彼女のためにあるんじゃないかと思うくらいだ。

「この俺働いてるぜ!って感じが堪らなくイイ」
「……こりゃ真性だね」

 織田軍のどっかの誰かさんのようだ。勘弁してほしい。

「まあ半分冗談にして、火急の依頼ばっかり寄越されんだよ。致し方ないってやつ」

 半分は本気なんだ。
 でも火急の用を任されるって相当有能ってことなんだろう。
 俺様には板をカタカタしてるだけにしか見えないが。

「こないだ飛行機の話したじゃん」
「へ?ああうん、空飛ぶ鉄の塊だろ?」
「そうそれ。それがどうやって管理されてると思う?」

 質問の意図を測りかねて首をひねる。

「……蔵とか?」
「そーゆー物理的な話じゃねーよ」

 笑い飛ばされた。
 この人は、女の割に口が悪い。

「何機あって、どれがどこに飛んで、どこのが飛んでくるのか、変更があった場合や事故が起きたときなどなど、全部こいつが管理しちゃうわけ」

 そう言って箱を人差し指で弾く。
 そんなこと言われてもいまいちよく分からない。

「……ふぅーん」
「ま、化石人間にこんなお話分かってもらおうとは思っちゃないよ。世の中の動きは何かが水面下で働いてるってこった。あんたの仕事と一緒でね」
「大それたお仕事なわけだ」
「日の当たらない仕事だろ」

 確かにすごいと思うことはいろいろあるけれど。

「あんたはもうちょっと日に当たった方がいいよ」
「物理的な話じゃねーんだって」

 物理的にもなんにでもいいからもうちょっと日が当たればいいのに、ね。












+++あとがき+++
休止以前に書いたストックフォルダにあったものです。
社畜万歳。あ、飛行機なんかのシステムを開発するのに一人でやってるわけがないですし、修正依頼にしたって大規模なはず。なので、もちろん妄想です←

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2013.12.28