それはまるで嵐のような
「馬鹿か!!」
馬鹿だってことくらい分かってるんだ。
自分がどれだけ馬鹿か、なんてことは、自分が一番よく分かっていた。
「あんた、馬鹿だよ……っ」
さすがにここまで馬鹿だとは、私も思わなかった。うん、たぶん。
「馬鹿、野郎っ」
でもそんなに馬鹿馬鹿連呼してくれるな。
重たいまぶたをゆっくり開ける。開けるだけてもしんどいと言うのに、まったく私も大概馬鹿だ。
「うるさい」
ああ、肺が軋む。結構ヤバイ、な。息するのって、こんなに大変だったっけ。
「ッ!」
「さっき、から……人が、おとなしく聞いてれ、ば、馬鹿馬鹿と……」
「馬鹿だよ!俺なんか、何で忍の俺なんか庇った!!」
目の前の男の言葉に苦笑が出る。いや、出そうとしたが、痛みで顔が引き釣った。こいつはまったく、口を開けば忍なんか、とか言う。
「しの、びとか、しゃなく、私は……あんたを庇った、んだよ、佐助」
「ッ!」
ポタリと、何かが頬に当たった気がした。忍、忍というくせに、なんだその顔は。まるで、泣いているみたいじゃないか。
そう言えば、と、昔こいつに出会い頭に言われた言葉を思い出した。
「ぶっさいくな、つら」
本当に失礼なやつだったな。
「もう、喋んなッ!」
ぎゅうっと暖かいものに包まれた。抱き締められたのかと分かったのはその一拍置いたあと。苦しいぞ、佐助。
「佐助、」
「喋んなって言ってるだろ!?」
あんたが耳元で喋んな。
「佐助、夕食は、なんだ?」
あんたの飯、うまいよなー。
私を抱く力が少し和らいだ気がする。
「こんなときに……」
うん?なんだって?よく聞こえない。
ああ、暖かい。眠たい。少しばかり、疲れた。
まぶたが落ちる。
もう、限界だな。それが分からないわけじゃない。
「さ、け、すま、な」
「謝るくらいなら庇うな」
はは、確かに。でも、庇う庇わないに謝ったわけじゃない。最後の最期の悪あがきに、すまないと思う。あんたには呪いの言葉になってしまうかもしれないのを承知で口にすることを許せ。
渾身の力を込めて、口を、喉を震わせる。
「好き、だ」
私の名を呟く、掠れた声が、私まで届くことはなかった。
ってどんなヤツだったかって聞かれたら、俺様間違いなくこう答えるよ。
人の心ん中掻き乱して、あっという間に過ぎ去った、まるで嵐のようなやつだった、ってな。
+++あとがき+++
分かりづらいですが、戦場で佐助を庇って死んじゃうネタです。
そういえば戦国なんですよね、BASARAって(ぇ
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2008.04.13