衣装披露
「殿!」
見知らぬ人に呼ばれました。
思わず自分の後ろを振り返えるが、そこには誰もいない。この場には私だけで、と言う名は私の名前であって、ということはこの見知らぬ人は私を呼んだということになる。
もう一度その人を見てみる。
その姿は鎧、だと思うのだけれど、生憎私が知っている中でこんな鎧を着ている人は見たことがない。輝く瞳がどこかで見たような気がするが……はてさて、どこで会ったんだろうか。
「……どちらさまでしょうか」
聞けば輝いていた瞳が途端にうるうるし出す。
え、ちょっと、待って、私が何したの。
あ、いやその知り合いだったら非常に申し訳ない反応だとは思うのだが。
「某、幸村でござる」
泣きそうな声に申し訳なく思う。
って、幸村?
これが、幸村?
「ゆ、き……むら?」
え、幸村といえば腹だしというか、その上半身ほぼ裸っていうかその印象が強すぎて、正直顔を覚えていなかったといったらすっごい落ち込ませてしまうかな。
でも、幸村私より背が高いんだもん。胸板くらいしか普段見てないよ。っていうか顔見上げてたら首痛くなるし。いや、でも、なんというか、すまん。
「え、ごめ、あの、衣装違う、よね?」
「新しい戦装束をお館様から賜ったので殿にまず見ていただきたかった故……」
ほんとにしょんぼりさせてしまったようだ。
「ちょっとちゃーん、旦那の顔覚えてなかったってこと?」
「え、え、あの?」
今度は誰だ?
ん?私のことをちゃんって呼ぶのは、あれしかいないのだけど、目の前に現れた人は真っ黒くろで、新手、なんだろうか。
こっちも誰ですかと聞いたら落ち込ませてしまうだろうか。いやでも、分からないし。
「すみません、どちらさま、でしょう?」
「え!?俺様も分からないの?愛がないなー」
「うひゃっ」
腰!腰を抱くな!!初対面なのに何この人!
いや、初対面じゃないのか?
「佐助!破廉恥であるぞ!!」
「……さすけ?」
幸村の叫び声に我に返る。見上げればにっこりと笑われていると思うのだけど顔面半分見えないから誰だかわからない。幸村が佐助と呼ぶのだから、この真っ黒くろすけはいつも迷彩柄の忍ばない佐助なのだろう。
が、
「そんな、ウソだ!佐助が、忍っぽい格好してるなんてありえない!!アンタ誰だ!!」
「俺様泣いていい?」
「え、あ、ごめん」
しくしくと天上の梁の上で泣くのは止めていただきたい。黒いから影に見失う。……あれ、忍としてはそれいいことじゃん。
しかし改めて見ると似合ってる。
幸村のは腹を出してないから防御力も上がるだろうし、炎柄は健在の上に背中が六文銭じゃなくて武田の家紋になっていて、幸村のお館様好きを存分に活かしきっていると思う。
佐助のは忍らしく黒、……かと思ったんだけどよくよく見ればちょっと迷彩入ってる?黒迷彩?佐助らしさを残したって事なんだろうか。……でもさ、これであの赤い凧に乗るの?ま、まぁいいか。私が乗るわけじゃないし。口元も覆っていていつものにやけ顔も黒い布で隠れるから目元だけ見えて忍に見えるし。いや忍だけどね。
「二人とも似合ってるよ」
「真でござるか!?」
「ほんと!?」
「ほんとほんと。カッコイイよ」
ちょ、アンタら接近しすぎ。特に佐助、アンタさっきまで天井の梁にいたでしょうが。
ぐあっと迫られてのけぞってしまった。
そのまま勢いで後ろに倒れそうなところを誰かに支えられる。
見上げれば……
「お館様!!」
にっこりと笑われるお館様は今日も素敵です。
「大丈夫か?」
「はいもちろん!お館様のおかげです!」
「そうかそうか」
ん、よく見たらお館様も衣装替わってる?
幸村の変わりに露出されてはいて、虎模様はないけれど履物に入った武田の家紋が虎模様みたい。それに風林火山も健在だし、さすがお館様。ああもう、言うことはありません。
「お館様も新しい衣装になさったんですか?」
「おぉ、気付いたか!どうじゃ?」
「虎模様もお似合いですけど、その衣装も素敵です!」
「はっはっは、そうかそうか!」
頭を撫でられて私はご満悦であります。
でもどうしてみんないきなり新しい衣装着出したんだろう。飽きてきたのかな。今までの衣装が奇抜すぎたってようやく気付いたのかな。
……戦って目立って何ぼだと思ってたけどそうでもないんだね。
「うぉ館さばと殿の間に入れぬ壁が……」
「なぁんで大将だけわかるかなー……」
+++あとがき+++
武田の第二衣装ネタ。
個人的には幸村は素肌にジャケット(?)じゃないと落ち着かないです。なぜなら……暑苦しいじゃないですか!!(酷)
お館様は第二衣装大好きですけどね♪
え、佐助?何でも好きですよ!染め衣装でも何でも恋v(not漢字間違え
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2008.03.30