夢話-夢小説の間-










 好きか嫌いかと聞かれたら全力で好きだと答えられる自信がある。
 世界で一番好きだと言っても過言ではないくらいに好きだ。

 お館様に彼のことをどう思うか聞かれたから素直にそう答えた。
 横に控えていた幸村は顔を真っ赤にしている。
 ……幸村が赤くなる要素はどこにもない気がするのは気のせいだろうか。
 お館様は私の返答を聞いて「ふむ」頷いたまま沈黙を守っている。

 どうしたものかと思いながらちょっとだけ回想にふける。
 先日戦があって、みんな……いや、主要な人たちはみな無事に帰ってきた。
 もちろん彼も無事で、ほら見ろと言わんばかりの顔をされたのは記憶に新しい。
 まだまともに顔を合わせる機会がなくておかえりなさいとは言っていないが……。

「ならば名を呼ばぬのは、何故じゃ?」

 ようやく口を開いたお館様の口からはどうしような言葉が飛び出した。
 何故、なんていやそんな、ここに来る前から呼べないんだから仕方ない。
 まっすぐと尋ねてくる視線に嘘はつけない。というか、そもそもお館様に嘘なんかつけない、し。

「……恥ずかしいから、です」

 あ、今、きょとん、ってされた。
 うあああ、恥っず!
 今時好きすぎてその人の名前も呼べないなんてどんなヘタレだろうか。

「恥ずべきことなど何もなかろう」
「至極その通りではありますが無理ですすみません呼べませんごめんなさい自害していいですか」
「まままま待たれよ!!は、早まってはならぬ!」

 頭を深々下げてごめんなさいをするとわたわたした幸村のどでかい声に耳をやられる。
 もう、君の喋るセリフはすべて太字でいいよ。

「命令じゃ。名を一度呼んで見せよ」
「え……」

 名前を、呼ぶ?彼の名前を、口に、出して?

 ええええええっ!?

 なな、なんて、なんてことおっしゃりやがりますかこのお人!?
 無理無理むる!あ、喋ってないのに舌噛んだ。………じゃねー!!

「お、おや、お館様!」
「佐助ぇ!」

 呼んじゃったしーッ!

「大将、お呼びですか?」

 来ちゃったしーーッ!!
 そういう有能なところも好きだけど!

「ほれ」

 いや“ほれ”じゃないですよ!?
 何ですかそのフリ!?
 うわ、こっち見たし!
 なんで呼ばれたかさっぱりそうな彼はそりゃもういつも通り魅力的なんだがそうじゃなくて。

「なに?」
「あの、さ、さ……さ……」
「さ?」
「さす、さ、さすけさん、おかえり、なさい……」

 恥っずかしい!
 はぅあ!!な、何も下の名前じゃなくてもよくないか、今の!?余計恥ずかしいぞ!?
 絶対顔が赤いに違いない。
 何これどんないじめ?
 ちらりと伺うように彼を見れば。

「ただいま、ちゃん」

 少しだけ顔を傾げて、眥が緩んでて、目は優しくて、口は半月とまで行かないけと三日月くらいの弧を描いていて。
 見たことないくらい柔らかい笑顔は、反則だった。

「――ッッ!!!」

 気付いたら襖を殴り飛ばす勢いで全力で逃げていた。
 無理無理無理!
 あんな顔されたら直視なんてできやしない!

 ドキドキバクバク心臓がうるさい。
 さっきの彼の顔を思い出すだけでジェットコースターも目じゃないくらい心拍数は上がるし、階段駆け上るよりも息が切れる。

 浮かれたこの気分は、……楽しい、と名付けてもいいんだろうか。















「どーしちゃったんですかね、あの子」←全然気付いてない
「はっはっは!若いのぅ。幸村も見習えぃ!」←楽しくて仕方がない
「う゛、しょ、精進致しまするっ」←でもきっと無理






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2008.05.18