夢話-夢小説の間-





切ない人選手権

〜ときめけ男子!真田幸村編〜




 今日もよい朝だ。
 鍛錬日和とはまさにこのこと。
 ばたばたと廊下を駆ける音がして俺は苦笑する。

「ゆっきむらさ〜ん!おはようです!」
殿、おはようござりまする」

 今日も元気でござるな、と零すと、それが取り得ですから、とにっこり笑われる。
 朝鍛錬に向かう道でいつも彼女は現れる。そして共に鍛錬場へ向かう。
 何でも俺が鍛錬しているのを見るのが楽しいそうだ。
 女子に楽しいことなどひとつもないと思うのだが。

殿、その、今日は、あー、その、殿は?」

 うぅ、何故名前を言うのがこんなにも恥ずかしいのだ。
 しかし、いつもは殿と一緒にいるのだが今日は姿が見えない。体調でも崩されたのだろうか、心配だ。

「身体動かしたいから庭借りるって」

 そこで殿は俺を見て怪しく笑う。

「残念だったねー」
「っ!!そ、某そのようなことは一言もっ!」
「え、どんなこと?」
「〜〜〜っ殿ぉ!!」

 朗らかに笑われて、殿は駆け出す。鍛錬場の方向だ。
 いつも殿と殿には惑わされてばかりだ。……まだまだ俺も未熟だ。叱ってくだされお館様っ!!
 俺は熱を持った頬を冷ましながら殿の後を追った。

「あ」
殿?」

 殿が立ち止まり、窓の向こうへ視線の移す。
 その瞳がふっと和らいだ。
 優しく、慈しむようなその瞳にどくんと心臓が跳ねる。
 な、なんだこの胸の高まりはっ。

「幸村さん、綺麗だよ、桜」

 そっと呟かれた声にも俺の心臓は静まらない。
 いつも殿に抱くような……この気持ちは一体何だというのだ。
 だが、これだけは俺にもわかる。
 殿が……

「綺麗で、ござる……」

 いつも明るく世話しなく笑顔を絶やさない彼女が、こんなにも綺麗な顔をするものなのだろうか。

「さって、今日も鍛錬!でしょ?」

 にかっと笑った殿はいつもの殿であった。
 駆けて行く背中をボーっと見つめ…………俺は、一体何をしているのだ。
 頭を振って先程までの思考を飛ばす。
 お館様のために精進あるのみ!




(……『綺麗』って、桜が綺麗ってことだよね?
 幸村さんわざわざこっち向いて言わなくてもいいのに)







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2008.02.23