夢話-夢小説の間-





切ない人選手権

〜ときめけ女子!真田幸村編〜




 何でこんなことになったんだろう。
 武田主従コンビの陰謀か。そうなのか。ええ?
 状況を説明しよう。
 たまたま。それはもう本当にたまたまあたしとと佐助と幸村で紅葉狩りに出かけた。
 言いだしっぺは幸村で、乗ったのが。佐助は幸村とが行くからという理由。
 滅多に出来ない遠出だから来なよ、と佐助があたしに声をかけたのが悪いんだ。
 あんたに言われたら行っちゃうでしょうが。例えこの面子を眺めて切なくなろうが、さ。
 それがだ。突然の雨に邪魔された。
 避難場所を佐助が見つけてくれて、雨の中を4人で走る。走ったのが不味いってわけじゃないんだよ。雨にぬれていたくなかったから走って正解だったんだ。
 が。

「ぬお!?」
!!」

 が足を滑らせて崖に落ちた。そりゃそうだ。こんな山道現代でもなきゃ整備されていやしない。ぬかるんで当然なんだ。
 あたしが叫んだのと、隣から影が飛び出て行くのは同時だった。

「旦那!ちゃんヨロシク!」
「承知!殿を任せたぞ、佐助!
 殿!ここは佐助に任せ安全なところへ!」
「あ、う、うん」

 あまりな展開にあたしはついていけなくて、幸村に引っ張られるまま佐助が発見した小屋へと逃げ込んだ。
 多少雨漏りはしてるものの、壁もあるし屋根もある。が、人はいない。ま、こういう時代だし空き小屋が何軒あっても不思議じゃないよね。
 幸村はさっさと上がりこんで囲炉裏に火をつけてくれる。
 さっき引っ張ってくれたことと言い、今火をつけてくれたことと言い、幸村の……意外と、頼りになる面を垣間見た気がする。

殿、その、平気でござるか?」
「んー、寒い」

 服が引っ付いて気持ち悪い。着物だから余計に。あたしは小屋の中を見回す。

「ああ、定番定番」

 ぼろぼろの毛布のようなぼろきれのような布を発見した。こちらは空気を読んで一枚といわず何枚かある。

「はい、幸村。身体拭いちゃいな……って、なに?」
「ははは破廉恥極まりないですぞぉぉおおお!!」

 真っ赤になってうずくまっている日本一の兵。
 それでいいのか、真田源二郎幸村。
 まぁ理由は分からなくもない。今スケスケだしね!幸村には刺激物だよね!
 下にある幸村の上に布を何枚か落としてやる。

「それで身体拭いて。風邪引くよ。
 あたしは離れて拭いてるからさ」
「か、かたじけない」

 囲炉裏をはさんで、背を向けて身体を拭く。
 しばらく無言で時が過ぎた。
 雨音は止む気配がない。
 佐助と、大丈夫かな。

「……すまぬ」

 小さく聞こえた声に振り返る。
 幸村は向こうを向いたまましょぼんと肩を落としている。

「……幸村って雨呼べるの?」
「ま、まさか!そのようなことはござらん!」

 慌てたようにあたしを見る幸村。顔は赤いけど眼は真剣だ。
 ですよねー。呼べてたら殴るぞこいつ。

「じゃ、気に病む必要はないんじゃない?」
「しかしっ」
「外に出れたし、綺麗な紅葉見れたし、さっきだって幸村が引っ張ってくれたからこうして屋根のあるとこで雨宿りできる。
 だから、ありがとね、幸村」
殿……」

 呟くようにあたしの名前を言う。
 よしよし、しょぼんされたら佐助とに恨まれるしな。

「やはり某、殿には敵わぬ」

 静かに言われて幸村を見た。

 心臓がドキッと音を立てる。

 いや、ドキッとするってあたしどうした!?
 だって、いつもあたしを見ると顔真っ赤にして逃げるあの幸村が、あの幸村があたしのこと真っ直ぐ見ながら、水滴らせながら、綺麗に笑うんだよ!?
 落ち着けあたし。いくらなんでも錯乱しまくりだろ。
 ふぅっと息をつくと幾分落ち着いた。

、殿?」

 ……卑怯だ。

「水も滴るいい男、か」

 強ちウソじゃないってことかな。
 早く佐助と帰ってこないかなー。雨止まないかなー。



(いい男って、俺の……こと?うあああああっ破廉恥であるぞ殿っ!!)








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2008.03.24