―――ふぅ………。
どうしたんですか?これから楽しい休暇だって言うのに…。
―――リオンのことが心配なのよ。
リオン様が?
―――嫌いな物を残したらいけないって何度言っても聞いてくれなくて…。
そういうことなら私にお任せください!
最恐メイド様
〜最恐伝説浮上〜
私――はつい最近入ったばかりの新人メイドさんです。
こういうヒラヒラのメイド服って一度着てみたかったんですよね。
まだ右も左も分からぬ新参者の私を助けてくださったのがマリアンさん。
黒髪の素敵なお姉様なのです(グッ)
仕事のことは何から何まで親切丁寧に。
それはもう、私の女神様ってくらいな勢いで尊敬してます!
「マリアンさーん」
新人メイドとしてこの屋敷に入ってから一週間。
その女神様――マリアンさんが有給休暇を取られました。
一年に一度は帰って顔を見せないと叔母様が心配するとか……。
いい娘さんですよね!
「あら、?」
「はい!」
部屋に顔を出すと荷造りを完了させたマリアンさんがいた。
ああ、相も変わらず清潔なお部屋…vv
「軽装なんですね」
「ええ、そこまで遠いというわけではないの」
尋ねる私ににっこりと笑顔で答えてくれました。
でも、いつもならもっとニコニコしているのに、今日のマリアンさんには元気がありません。
「ふぅ……」
「どうしたんですか?これから楽しい休暇だって言うのに…」
ため息つくだなんて、マリアンさんらしくない。
「リオンのことが心配なのよ」
「リオン様が?」
リオン様といえば、この屋敷に住んでらっしゃる客員剣士という位のお方。
一度遠目に見たことはあったけどいまだ話した事はありません。
でも確かに物凄く美人だったのは覚えてる。
ミーハーなメイドさん方が夢中になるのも分かります(しみじみ)
「何が心配なんです?」
「嫌いな物を残してはいけないって何度言っても聞いてくれなくて……」
嫌いな物……食べ物ですか?
リオン様にも嫌いな物ってあるんだ…。
意外だなぁ〜。
でも!
「そういうことならお任せください!
不肖私、がマリアンさんのいない間代わってリオン様のお世話をさせていただきます!」
「でも…」
「大丈夫です!マリアンさんは安心して帰郷してください」
渋るマリアンさんにガッツポーズつきで私は言った。
思えば、リオン様もいい年なんだから何とかなるな、なんてのは甘い考えでした。
マリアンさんがお休みしてから一日目。
さっそく出番です!
朝食を取りに食堂に下りて来たリオン様に一礼。
「おはようございます」
「……マリアンはどうした」
小首を傾げつつリオン様は席につく。
「休暇を取られました。私は彼女に代わりまして配膳させていただくという者です」
席についたリオン様に自己紹介。
次いで食事を運ぶ。
「本日のメニューはトーストにベーコンエッグです」
食器を置いた後、少し下がって様子を見る。
一体何がリオン様の苦手な物なんだろ?
ちゃんと普通に食べて……食べて…???
「リオン様、好き嫌いは良くないですよ?」
器用にベーコンエッグと一緒に添えられてあったニンジンだけが残されてました。
他にはグリンピースやコーンも乗ってたはずなのに、綺麗にそれだけ取り残されてます。
これだ。きっとこれだ。って言うかこれしかありえない。
指摘をした私ですが…リオン様に睨まれました。
怖いです。怒りオーラ満々です。
しかも次には、
「うるさい」
これです。
すみませんとか、怖いとか、そんなこと思う前に、育ちが良くない私はこう思っちゃいました。
……このクソガキ、と。
ハッ!仮にも客員剣士様である方にクソガキなんてっ。
でも、すみません。
女神様に誓っちゃったんです。
リオン様に好き嫌いさせないと。
バンッ
テーブルを叩いてリオン様を真っ直ぐに見る。
「うるさくて結構です。食べてください」
っていうか、食え。
リオン様は私の反応に驚いてたみたい。
でもやっぱり食べるなんて事はしないで私を睨みます(泣)
「しつこい女は嫌いだ」
いや好みのタイプは関係ないと思いますよ、リオン様。
「嫌いだろうが何だろうが食べてください!
マリアンさんにリオン様が偏食しないかどうかを任されたんです!」
「余計なお世話だ」
何を言おうが何だろうが突っぱねるリオン様。
私も頑張ってるのに…あんまりです。
「お前と下らないことで言い争ってる暇はない」
「あっ」
がたっと立つと剣を片手にさっさと食堂から出てってしましました。
リオン様、そんなにニンジンがお嫌いですか……。
切なく食器を片していると雇い主様であるヒューゴ様が食堂に降りてきました。
「おはようございます、ヒューゴ様!」
「ああ、おはよう」
ヒューゴ様はお返事返してくださるんですよね。
「ただいま朝食をお持ちいたします」
リオン様に出したものと同じ物をヒューゴ様にも出す。
「ああ、ありがとう」
静かに優雅にそれを食べ始めるヒューゴ様ですが。
先程と変わって今度は緑の物体が皿に残されています。
アレは私も嫌いですよ。嫌いですが、好き嫌いってのは良くありません。
「ヒューゴ様、好き嫌いは良くないですよ?」
「はは、苦手なのだよ」
苦笑いして逃げようったって無駄です。
今日の私は今しがたのリオン様の行動で食に関して厳しくなってます。
というよりむしろ意地になってきた。
Let’s 好き嫌い撲滅☆
「苦手どうこうでは回避させませんよ?アレルギー等の話は聞いてません」
にっこりと、表面上だけの笑顔で言う。
たじたじとする雇い主を追い詰めるメイドこと私。
何か変な図ですがこの際気にしないで食べさせちゃいましょう(鬼)
「ご自分で食べられないというのなら…」
さっと置いてあるスプーンを取ってグリンピースをすくう。
それをヒューゴ様の前に出して、
「お口、開けてください♪」
いわゆる、「あーんしてvv」の状態(笑)
「い、いや、自分で食べよう」
ヒューゴ様はそう言うと私の手からスプーンを取って自分の口に運んだ。
リオン様もこれくらい素直に言うこと聞いてくれるといいんだけどな…。
でもマリアンさん、安心してください!
初戦には敗退しましたが絶対にリオン様にも食べさせてみせます!
ええ、それはもう無理やりにでも!!
私は新たな(どうでもいい)決意を胸に秘めるのでした。
To be continued...
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