夢話-夢小説の間-




 ―――食べてください!!

 嫌いな物は嫌いだ!!!

 ―――体を壊してもいいんですか?!

 こんな物食べる方が体を壊すに決まってる!!

 ―――……だから背が伸びないんですよ、リオン様

 ッ!!!うるさい!!




最恐メイド様
〜敗者復活戦!〜





 朝。僕は朝食を取る為に食堂への階段を下りる。
 食堂が近づくにつれ、向かう足取りは自然と重くなった。
 だが、一日の原動力である朝食を抜かすわけにはいかない。

「おはようございます、リオン様」

 無言で扉を開ければ、アイツが僕に頭を下げる。
 僕が移動すればそいつはサッと動いて椅子を引いた。

「本日の朝食はオムライスに野菜サラダです」

 ああ、やっぱり。
 テーブルの上に用意されていた朝食に思わず顔が引きつりそうだ。
 野菜サラダにはきっちりとアレが入っていた。

「リオン様、残さずきっちり食べてくださいよ」

 僕の表情を読んだんだろう。
 こいつは僕が何かを言う前に笑顔で言った来た。
 僕の偏食にいつも説教をするマリアンがしばらく休みを取ったと思ったら、こいつ――とかいうのが僕のお目付け役になった。
 僕と年も大して違わないくせに妙に説教くさい。
 彼女曰く、マリアンさんにリオン様が偏食しないかどうかを任された、らしい。
 こっちにとってはいい迷惑だ。
 「うるさい」
 初日にそう言って睨んだ。
 大抵の奴はそこで引き下がる。
 が、こいつは違った。
 ばん、とテーブルを叩いて、
 「うるさくて結構です。食べてください」
 だ。

「ふん」

 これを残すなといくら言われるのが例えマリアンだろうが譲った事はない。
 もちろん無視していつものようにアレは避けて食べる。
 それが分かったのかあいつはわざわざ
 
「リオン様、今日という今日は食べていただきますよ、ニンジン」

 そう言って避けてあったそれをサラダの中に再度混入させる。
 ただでさえ苦いエキスがサラダ中にまとわりついているというのに何てことするんだ。

「断る」
「食べてください!!」

 あまりのしつこさにバン、とテーブルを叩いた。
 後ろに控えていたメイド達が一気にビクつくのが気配でわかる。

「嫌いなものは嫌いなんだ!!!こんな苦いもの毒だろうが!!」
「体を壊してもいいんですか?!」

 声を荒げる僕にすぐさま反応を返してくる。

「こんな物食べる方が体を壊すに決まってる!!」

 言い切る僕を奴はジト目で見る。

「何だ」

 言いたいことがあるなら言え。

「…だから背が伸びないんですよ、リオン様」
「ッ!!うるさい!!!食べれない物は食べれない!!」

 コイツ、人が気にしていることを…!!!

「私は食べれますよ」

 そう言ってはサラダの盛ってある山からオレンジの物体をフォークに刺して口に放る。
 口の中でかむ音がし、ごくん、とあいつが飲み込む。
 しかし、よく、あんな物が食べれるな……。見てるこっちが気持ち悪くなる。

「ほら、毒じゃないじゃないですか。さ、食べてください」

 ずいっと目の前にニンジンの盛られた皿が突きつけられる。

「嫌だ!!!」
「無理やりにでも食べさせますよ?」
「ふん、できるものならやってみろ!」

 僕を力でねじ伏せる何て言うのは無理だ。
 そうたかを括った僕が悪かったのかもしれない。まさに売り言葉に買い言葉。 

「言いましたね?ではっ!」

 気合を入れて何をするかと思えば、ニンジンをほうばった。
 もちろん、僕がじゃない。
 食べさせると言ったそいつ自身が、だ。
 何するつもりだ?
 そう聞こうとして口を開けた途端、一気にあいつの顔が近づいて…、

「んっ??!」

 口を塞がれた。
 奴の口に含まれた礼の物が口の中に押し込まれる。
 苦い。
 あまりの苦さに視界が歪んだ。

「んぐっ!!」

 舌でソレの塊を押し込まれた。
 反動のように押し込まれたソレが喉を通る。

「ゲホッゴホッ、何をする!!!」

 多分涙目なんだろう。
 舌が苦い。
 目が痛い。
 喉も痛い。
 気分は最悪な僕にそいつはさらっと言った。

「出来るものならやってみろと言ったのはリオン様ですよ?
 ほ〜ら、この調子で残りも行っちゃいましょう!」
「断る!!!」

 皿のニンジンをさらに口にしようとした奴の手からそれを掻っ攫う。
 冗談じゃない。
 だいたいいい年の女が人に口移しで物を食べさせるか?!

「こんな物一人で食べられる!!」

 二度とあんな食べさせられ方されてたまるか!
 これでもかと口に入れたソレはやっぱり苦くて。
 それでもこいつに食べさせられたほうの怒りが勝って。
 僕ははじめて自分からソレを食べた。

「よくできました!」

 にっこりと悪魔の笑みを浮かべて奴は笑った。
 鬼だ。

「ふん、僕はもう行く!」
「はい、いってらっしゃいませ」

 腹立ち紛れに乱暴に椅子から立ち、ずかずかと食堂を後にする。
 と、入り口で意味ありげに笑うヒューゴがいた。

「おやおや、騒がしいと思ったら…。まだいたのかね、リオン?」
「ヒューゴ、様…。おはようございます」
「おはようございます、ヒューゴ様。朝食を用意させますね」

 僕はそのまま横を通り過ぎ、玄関向かった。
 その時、後ろから信じられない言葉が聞こえた。

「ヒューゴ様!好き嫌いは無しにして下さいとあれほど言ったでしょう!」

 信じられない。
 雇い主を叱るメイドがどこにいる?
 マリアンに代わって現れた鬼メイドに感心しつつ僕は城へと向かう足を速めた。





 To be continued...

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