夢話-夢小説の間-




 ―――何だ、それは

 えっと、食後のデザート、ですv

 ―――はぁ……。

 あ、お嫌いですか?

 ―――…フッ、いや……貰おうか。

 ありがとうございます!




最恐メイド様
〜食後の……〜





 食事時、リオン様は言われずとも皿に盛ったピーマン、ニンジンを食べてくれるようになりました。
 ヒューゴ様も同様に好き嫌いなく食を進めてくださいます。
 やっぱり熱心な説得は誰にでも通じるんですね!(アレは脅迫だ Byリオン)

「そうだ、君」
「なんでしょうか?」

 朝食終了間際にヒューゴ様に呼ばれ、そちらを向く。
 いつもながらにナイスミドルなお方です。

「明日マリアンが帰って来るそうだ」

 ……。
 マリアン、さんが…帰ってくる?!
 あの天使のような女神のようなあのお方が?!

「本当ですか?!」
「うるさい」

 喜ぶ私にすかさずリオン様の怒気を含んだ声が。
 しかーし、それ位で下がるようなテンションじゃありません。

「わざわざありがとうございます!」

 テンションキープのまんまペコリと頭を下げた。
 何か隣から鼻で笑われたような気がしないでも無いですが、そんなの気にしないで食べ終わって綺麗になったお皿を片した。





 
 そういえば、マリアンさんが帰ってくれば私はお役目返上なのよね……。
 ということは、リオン様やヒューゴ様の好き嫌いに目を光らせなくてすむのかぁ…。
 お掃除をしながらそんなことを考えた。
 マリアンさん、喜んでくれるかなぁ。
 なんと言ってもリオン様が偏食しなくなくなったなんて聞いたら驚くだろうな♪

「あ、そーだっ」 
 
 どうせ今日で最後なんだし、リオン様にご褒美を上げようっと!
 毎回の食事に嫌味ったらしくニンジンかピーマンを入れてたお詫びってことで。
 今日の夕飯なんて野菜炒めでピーマンもニンジンも入れちゃう予定ですからね★

「リオン様、何が好きなのかな…?」

 リオン様の好きなものってマリアンさんくらいしかないと思うけど……。
 そういえば…、この前マリアンさんにプリンの作り方を教えてもらったからそれにしよう!
 材料もまだあったハズ!(ぇ)

「お子様舌だからきっと喜んでもらえる……よね!」

 ちょっと自信ないですが、さすがにこの時間帯に買い物というのも怖かったのでさっさとクッキング。
 つい先日習ったばっかなのでチャッチャとやっちゃいましょう!
 掃除を手早く終わらせて、私はプリン制作のために食堂まで行った。






 嫌味のたっぷりこもった夕食の後、僕は部屋で仕事をしていた。
 まったく、あの女と顔合わせるのもやっと終わるのかと思うと清々する。

『…クスクス…』

 いきなり現れてマリアンの代わりだの何だのほざいた挙句に口移しで嫌いなものまで食べさせる。
 鬼か?馬鹿か?本当に女なのか?
 可愛げの欠片もあったもんじゃない。

『クスクス…』
「さっきから何だ、シャル」

 笑いを堪えているのか分からないが笑い声が丸聞こえだ。
 意思を持つ兵器――ソーディアン。
 それがシャルことシャルティエ、この剣だ。
 僕にしてみれば子供の頃から共にいるお節介な世話役といったところ。

『いえ、ぼっちゃんが好き嫌いをなくして下さって何よりだなぁ〜と』

 それでもシャルはクスクス笑いを止めない。
 昔からそうだ。僕が困ってる時に限ってこいつは…、

「……お前、面白がってるだろう?」
『あ、バレちゃいました?』

 やはりな。
 文句の一つでも言ってやろうかとしたとき、ノックがかかった。
 ……誰だ?

「入れ」
「失礼します」

 入ってきたのはあいつだった。
 あのとか言う、人の嫌いなものばかり食事に出す…。
 自然と顔が不快感を示していそうだ。 

「リオン様、これどうぞ」

 僕の感情が分かっているのかいないのか、それでも奴はにっこり笑って皿を差し出す。
 さらに乗っているのはプリン。
 マリアンはいないわけだし、誰が作ったんだ?

「何だ、それは」

 プリンから視線を外してそいつ自身を見る。
 そいつは少し照れたような笑いを見せると、

「えっと、食後のデザート、ですv」

 そう言った。

「はぁ……」

 自然とため息が出てくる。
 こいつに好物の話はしたことがない。
 となると、マリアン経由か、はたまた偶然か…。

「あ、お嫌いですか?」

 少し残念そうな顔を見せる。
 ……まさか、無理やり食べさせるつもりじゃないだろうな…。
 そんな不安が頭に過ぎるが、そういうわけでもないらしい。
 そのまま帰すのは勿体無い、か…。

「…フッ、いや……貰おうか」
「ありがとうございます!」

 皿を受け取るとあいつは物凄く嬉しそうな笑顔を作った。
 何だ、こういう顔をすれば可愛いじゃ…。
 ッ!僕は何を考えてるんだっ。
 顔が熱い。

「どういう風の吹き回しだ?」

 あまり同様を悟られないように尋ねた。
 それでも心臓の音が耳の近くでうるさい。

「あの、嫌なモノを無理やり食べさせてしまったお詫びというか…」

 言いにくそうに彼女ははにかんで言う。
 一応、無理やりという自覚はあったんだな。
 スプーンでプリンをすくって一口。
 ………甘いな。

「お口に合いますか?」

 小首を傾げて聞いてくる。
 何でこう、食事の時と人が違うんだ?

「甘い」
「そりゃそうですよ。プリンですから」

 こいつの笑顔を見ていたら、ちょっとした悪戯心がうずく。
 この機会に、仕返ししてやってもいいな。
 プリンを一口吹くんで素早く相手のエプロンをつかんで引寄せた。
 その口に自分のそれを重ねて中にあるものを流し込む。

「っ!!!」

 口同士が離れた瞬間ずざざっとあいつはあとづさる。
 顔は真っ赤。いい気味だ。

「人にしておいてその反応は何だ?」
「いえ、そのっ、まさか逆にやられるとはッッ…!!///」

 回らない舌で必死に何かを言っているが、すべて言葉になっていない。
 人にやっておいて、馬鹿かこいつは。いや、馬鹿だな。
 
「この間の仕返しだ」
「あ…」
「何だ?」

 何かに気付いたように声を上げるこいつに首を傾げる。

「え、いえ、何でも無いです!それでは、おやすみなさいませ」

 わたわたと妙なリアクションをするとそいつはさっさと出て行った。
 持って来た皿を置いて。
 まぁ、まだ残っているから良いが。
 依然笑い続けるシャルのコアクリスタルを叩いて黙らせ、僕は仕事に戻った。





 はぁ……。
 まさか、まさか逆に口移されるだなんてッッ。
 しかもプリンを…。まだ口の中が甘い……。
 ああっ、でもでも、あのリオン様が笑ってくださるだなんて、これは大きな進歩じゃありませんか?!

「…今日は、眠れなさそう…」

 手が自然に唇が重なった所にそっと触れる。
 柔らかかったな……。って、私はどこぞの変態ですか?!(汗)
 でも、やった時には必死すぎて気付かなかった…。

 き、今日の所は早く寝ましょうっ!!
 急いで部屋に戻ってベッドの入る私でしたが、
 しばらく興奮してて眠れなかったのが事実だったりします;;





 To be continued...

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