夢話-夢小説の間-




………恋煩い?

―――いきなり何を言うんだ!!



………リオンの事が好きなのね

―――す、好き?!え、と、そのっ







最恐メイド様
〜好き?嫌い?最恐メイド再び〜







 マリアンさんが帰ってきて、私は元のお仕事に戻るようになりました。
 元のお仕事って言っても大したことないですけどね。
 屋敷中のお掃除をしたり、買い物にパシられたり…。
 新人メイドは大変なのです!
 ただ、

「最近リオン様、見かけないなー……」

 そう、
 最近ご多忙なのか、デザートをお届けして以来まったく見かけてもいないのです。
 同じ屋敷内にいるというのになんともタイミングが悪いというか何というか……。
 やっぱりちょっと寂しい。
 あの時少しだけ見せてくれた笑顔がすごく綺麗だった………。
 思い出すだけで胸がうるさいほどに鳴る。

「はぁーーーー…。綺麗、だったな……」

 もう一回で良いから、見てみたい…。
 ………。

 はっ!仕事仕事!

  はぁーーー、キュッキュ!

 吐息が白い霧となって窓に吹きかかる。
 窓拭きには新聞紙が一番☆

「あ………」

 ちょうど拭いていた窓のすぐ傍のお花がピンチだった。
 少ししおれてお花の部分が床と見詰め合っちゃってた。
 って、冷静に見てる場合じゃない!この近辺は私の掃除区画だったぁ!!
 や、やばひ………。これは…。

 怒られる!!

 私は花瓶ごと持つと急いで流しがある所まで行った。
 メイド長はマリアンさんですが、お説教を下さるのは古株の先輩達だったりするんです。
 その怖さといったら………。
 言葉に出来ないほどだというのは確か。

 だけど、本当に急いでたせいでその後リオン様が通ったことに私はまったく気付かなかった。







 マリアンが帰ってきて、あいつにも会う事がなった。
 せいせいする………はずなのに、何で……。
 何だ、この胸のわだかまりは…。

 廊下を歩くブーツの音は覇気がない。
 いつもマリアンの所へ行くときは軽い足取りだったはずなのに……。
 頭にあるのは彼女の優しい笑みではなく、あいつの顔。
 馬鹿みたいだ。
 頭を振ってそれを追い払う。そしていつの間にかマリアンの部屋の前にきていた事に気付いた。
 ………考えすぎだな。

  コンコン

「はい。あらいらっしゃい、エミリオ」

 思ったとおりの優しい笑み。
 いつも彼女には癒される。

「ああ」




「どうしたの、エミリオ?」
「あ、なんでもないよ、マリアン」

 覗き込んでくる彼女のやさしい顔に顔を崩して答える。
 彼女だけだ。
 僕を分かってくれるのは。
 認めてくれるのは。

「ところで聞いた話によると、食べれるようになったそうね?」
「アレは無理やり食わされたんだ!自分で食べないと何をやらかされることか………」

 流石に口移しで食べさせられたことなど話せない。
 そういえばメイド達の噂で、ヒューゴも僕と近いことをされたようなことを聞いた。
 何故か分からないが、腹が立つ。

「そう?が大喜びで話してくれたのだけど………」

 残念ね、とマリアンが悲しそうな顔で言う。
 だがそんな顔されたところでアレ等を自分から食べるなど……っ。
 考えただけでも気持ち悪くなる。
 思えばこの数日間地獄のような日々だった。

「とにかく、嫌なものは嫌なんだ」
「好き嫌いしてはだめといったでしょう?」
「じゃあ食べれない」

 困ったわね……、と呟くマリアンの声が耳に聞こえる。
 困ったのはこっちだ。
 食べたくないものを無理やり口に押し込められて、どれだけ苦痛を味わったことか。
 あんな見たこともないメイドに………、ん?

「マリアン、はここの屋敷のメイドなのか?」

 最近まったくもって姿を見かけない。

「ええそうよ。数ヶ月前に入った新人なの。知らなかったかしら?」
「メイドの顔なんていちいち覚えない」

 僕の一言にまたマリアンは苦笑する。
 にしても、新人であの度胸とは、見上げたものだな。
 いや、単に馬鹿なだけか。
 そのあともマリアンと話していたが、どうしてもあいつの顔が頭から離れなかった。

 マリアンの部屋から帰る途中、久しぶりにあいつの姿を見た。
 食堂のときとは打って変わって真剣な顔。
 息を吐き、布で窓を一生懸命にこすっている。
 近くの少ししおれ気味の花があいまって雰囲気さえも別人に見える。
 なるほど、これが奴の仕事か。
 そう感心していたのだが・・・。
 奴は何を思ったのか、いきなりサルの真似事を始めた。

「廊下のど真ん中でサル芸をするな」

 思わず声をかけると、あいつはガバッと振り返って僕を見た。 

「リオン様?!」

 驚いたような、でも嬉しそうな顔が少し前の夜と重なって心臓が高鳴る。
 あの時重ねた唇は柔らかくて……。
 っ、アレはただの仕返しだ。
 何を意識しているんだ、僕は。
 
「あ、申し訳ありません!」

 僕が黙っているのを見て、自分が邪魔という結論に至ったみたいだ。
 さっと脇によって頭を下げる。

「ふん」

 そのまま突っ立っているのも味が悪く、さっさとその場を後にした。

 ブーツが軽快に鳴る。
 さっきまで胸につかえていたものが取れたような、そんな感じだ。
 何なんだ、いったい……。

 部屋に戻ってデスクの前のイスに腰掛ける。
 そこに積んであるのは幾冊かの本。
 読んでおけと言われて、マリオンに会いに行く前に取りに行ったんだっけな……。
 そんなことを考えながらそれに手にとる。

「………」

 ぱらぱらと本を構成する紙の音が聞こえる。
 だが、頭にまったく入ってこない。

「ふぅ………」
『坊ちゃん?お疲れですか?』

 自然と漏れた溜め息にシャルが反応した。

「いや……」

 疲れている………訳ではない。
 頭あいつの顔が浮かんで離れないだけだ。

『それとも………恋煩い?』
「ぶっ?!」

 な、な、なっ、
 シャルに罵声を浴びせようと思うものの、上手く言葉が出てこない。

「い、いきなり何を言うんだ、シャル!!」
『坊ちゃん、顔が真っ赤ですよ』

 からからという楽しそうな笑いが頭に響く。
 くっ、いつの間にこんな口を利くようになったんだ。

「うるさい!!黙ってろ!!」
『ひゃぁっ』

 怒鳴り声とともにコアクリスタルを睨むと悲鳴をあげてシャルは黙った。
 僕が恋煩い??
 馬鹿にも程がある。
 大体相手なんて………。
 っ、あんな奴なはず、ある訳ない!

『坊ちゃん?』

 シャルの声が頭に響く。
 さっきよりも真剣な声。

「………何だ」
『答えは坊ちゃんの中にありますよ』
「シャル?」

 何のことか分からず聞き返すが、その後は問い掛けても沈黙を守るだけだった。

「何なんだ、まったく……」

 自分でも分からない感情を持て余して、結局本を読破することが出来なかった。








  コンコン

 ちょっと控えめにマリアンさんの部屋のドアを叩く。
 だって、今は夜。
 もし寝てたら悪いし………。

「はい?」
「あ、マリアンさん、こんばんわ!」
「あら、 ?久しぶりね」

 笑顔で迎えてくれるマリアンさん。
 そんな貴女が素敵です!

「どうしたの?こんな夜更けに…」
「本当はもうちょっと早く来たかったんですけど……お説教を貰っちゃいまして……」

 そう、あの後仕事が遅いと少々(かなり)お局様方に苛められますた。
 ああ、思い出すだけでも………。
 良く頑張った自分!と褒めてあげたい…。

「ふふ、それは大変ね。こんな所で立ち話もなんだからどう?」
「あ、失礼します!」

 招かれて入るとやっぱり綺麗なお部屋。
 いーなー。私のところは集団生活でしかもこんなに綺麗じゃないです。
 個人部屋を貰えたって綺麗にするような性格じゃないけど(笑)
 
「それで、何かあったのかしら?」
「え…?」

 何か……?
 ……。
 ………………。

 ………………アレ?

「格別これといった用はないんですが、最近全然お会いしてないので元気にしてらっしゃるかな、と。
 元気そうで何よりですv」
も元気そうね?良かったわ」

 ふわりといつもの優しい微笑をくれるマリアンさん。
 ああ、私のことで心配してくださるんですか?
 ありがとうございます女神様vv

「それに嬉しそう。何かあったのかしら?」
「あ、はい!今日は久しぶりにリオン様に会ったんです!
 相変わらずお美しい限りで……。それに元気そうで嬉しかったです」

 元気そう、というところで微かにマリアンさんが驚いたような顔をしてた。

「そう……。 はリオンの事が好きなのね」

 ………えぇ?!

「す、好き?!え、と、そのっ」

 好きという単語に心臓の鼓動が早まった。
 分からない。
 私、リオン様のこと、好き、なの??

「好き、かどうかは分かりませんけど……。
 でも、リオン様のお食事している様子を見るのはすごく好きですね」
「あらそうなの?」
「はい!だって、あのリオン様がニンジンを食べている顔といったら………。
 あ、ヒューゴ様も面白いんですよ♪」

 ていうかむしろ可愛いんですvv

「それなら、少しお願いしたいことがあるんだけど……」
「何ですか?!私に出来ることなら何なりと!!」

 私の様子にクスッと笑ったマリアンさんはいたずらっ子みたいだった。
 でも、彼女の提案に私は踊りだしたくなるほど嬉しくなった。
 だって、また………。






「おはようございます、リオン様!」

 どくん、と心臓が脈打つ。
 食堂に入って第一声がこれ。
 出迎えたのはあいつ、のさわやかな笑顔。

 ………………ちょっと待て。

 何でこいつがここにいる?
 マリアンが帰って来るんじゃなかったのか??

「実はですね、メイド長様直々にリオン様の食事配膳係になって欲しいとの事で…」

 待ってくれ。
 それはマリアンの陰謀か?

「またお世話になります!」

 という事は………。

「今日の朝食メニューは…」

 聞きたくもない。

「プレーンオムレツに目玉焼きですv
 もちろん例の物も入ってますので残さずお食べください」

 ああ、やっぱり。
 ………目眩がする。

「食べるまで食堂から出しませんよ、リオン様!」

 うなだれる僕を知ってか知らずか、はそう高らかに言い放った。
 また、地獄の日々が続くのか………。

 まぁでも……、悪くは、ないな…。

 それから毎日(はたから見れば)楽しそうに食事を取る少年と、満面の(某人物から見れば悪魔の)笑みを浮かべながら配膳する少女がいましたとさ。





 The End...

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+++あとがき+++
 えー、昔に書いた作品なのですが……青いですね、若いですね、青春ですね…。
 もう、もう、読み返していてこっちが恥ずかしかったですよ。