夢話-夢小説の間-





ファーストコンタクト






「嗚呼、全人類に不幸が万遍なく降り注げばいいのに、いっそ降り注げ」

 冒頭から物騒な呪いの言葉でこんばんは。
 今なら邪神でさえ崇め奉りたい心境でストレスがマッハのシガナイSE=社畜です。
 炎上現場から久しぶりにおうちに帰ってきてお部屋の扉を開けたら光物を持った侵入者がいました。

 意味が分かりません。

 重たい荷物を引きづり、帰路に就いた私へ神からのさらなる試練でしょうか。
 そんな試練いりませんしこれ以上苦労をしょい込みたくないです。
 もし神の与えたもうた試練だというなら神は死ねばいいと思う。

「あ、ふふ、そっか死ねばいいのか死ねば、うんそうだそれがいいそうしてください」

 遠慮なくずばっと、どうぞ、と続ければ、刀は引いた。
 何で引くんだそこでもっと熱くなれよ。
 楽園への片道切符が遠くことへ機嫌が急降下になる自分の心情を隠しもせずに口を開く。

「なにか、御用で?」

 自身のいつも出している声よりも低い声が玄関先に響く。
 さて、いい加減に思考を現実に戻そう。
 なぜなら私の明日からの仕事へ赴くための体力回復をしなくてはならないのだ。
 今は深夜の0時を回った頃だろう。時間は刻一刻と私の睡眠時間を削っている。
 昼食以降何も口にしていないのも私の機嫌を降下させる原因となっていた。

「貴様が我々を捕えたのだろう」

 暗闇から返ってくる言葉。
 声の質からして男。声変わりは経ている。
 我々、という言葉からしてこの男以外にも誰かいるらしい。
 捕えた、という言葉の意味が分からない。
 そもそも私は今日帰ってきたばかりだ。

「拉致監禁する趣味はない、ここは私の住居であり私はここ数日外出していた。 
 勝手に入ってきたのはそちらであり、罪を問われるのはそちらのはずでは」

 帰ってくるのは沈黙。
 しんとした空気が肌を刺すようで痛い。
 が、その前に胃が痛い。胃液が、胃酸が、私の胃に穴をあけようと頑張っている気がしてならない。
 答えがないのでこれでは埒が明かない。睡眠時間をこれ以上削られてたまるか。
 ぱちり、と玄関の電気をつければ、電気の下にさらされる人たち。
 光物を向けてきていたであろう人物が目に入った瞬間、私はそっと両手で目を覆ってしゃがみこんだ。

「嗚呼、」

 マジで全人類に不幸が万遍なく降り注げ。
 局部集中して不幸をばら撒かないでください神様お願いしますそれ雨と違うんですゲリラ豪雨じゃないんです。
 生きとし生けるもの万遍なく、平等にばら撒いてください神様なんでしょう。
 突然の光にうろたえたように抜刀した件の男は、再度私に光物を突き付け、

「貴様何をした!」

 と怒鳴り声を上げるわけだがもうなにから突っ込めばいいんだろう。
 見えてしまった不法侵入者はどれもこれも形容しがたい服装をしていて、
 寝不足と空腹がさらに重なり、気が遠くなりそうだった。

「現実が来い」

 心底、という言葉は本当によくできた漢字の組み合わせだなァ、と感心してしまうくらいに心の底から吐き出した。








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2014.04.13