夢話-夢小説の間-





真夜中の交渉






 さて予想通り昨日の今日の明日に再びおうちに戻ってきました。
 洗濯しなくてはそろそろ服がなくなるけどまとめて捨ててまとめて買ってもいい気がしています。
 そして洗濯とか、服をどうしようとか、そんなことより何よりも、

「やっと戻ってきたね」

 変な人たちが住み着いていることを先に何とかしないといけない気がします。

「勝手に出てけとは言ったが、勝手に住み着けとは言ってない……」
「出てはみたんだけれどね、どうにも僕たちは今まで生きていたところとは違う世界のよ
うで途方に暮れていたところさ」

 戻ってきてくれて助かるよ、と綺麗にほほ笑む麗人。
 別にあんたたちのために戻ってきたわけではなくここは私の家だから帰ってきて当たり前なんだがその前に、変なこと言われなかったか。頭を抱えようとしたその時。

 prrrrrrr

「あ、」

 また電源切るの忘れてた。ため息ひとつ、画面も操作ボタンを見ずに通話ボタンを押して耳に押し当てる。

「はい」
さんですか!?』
「そーですけど」
『すみません、通信上手くいかないんですけど、どうしたら!』

 だから、サポセンじゃねーんだよ、私はよ。
 テンパってるのは分かるんだがそれだけ言われても情報不足にもほどがあるんだろーがよ。
 痛くなる頭を押さえながら玄関と靴脱ぎ場の段差に腰掛ける。

「現場の名前と案件名、サバの名前は」

 鞄の中のノートパソコンを引っ張り出して起動。
 起動の速いプレゼン用のこのミニノートの相棒だけが世界の中でただひとつ私の味方である。
 電話越しに伝わる情報を入力、検索して対処法を手早く打ち込みメールする。
 大体マニュアル渡してあるでしょうが、それ全部やってからかけてこいっつーの。
 電源ボタンを押して、さらに長押しして電源を切っておく。再度ため息。そのまま靴を脱いで家に上がった。

「で、なんだっけ?」
「貴様、半兵衛様に向かってそのような物言い…!!」

 抜刀男が噛みついてくるが狭い廊下にひしめくなよ部屋入らせろ。
 面倒だなァ、とため息をついて、

「では丁寧な言葉でお話しいたせばご満足でしょうか?」

 疲れてんだからとっとと部屋に入らせろ、ガンを飛ばせば、黙ったのでその横を抜けて部屋に入る。
 部屋に入ればお気に入りにソファにさらに人がいた。今度は全身包帯だらけで正座をしているが、他の二人も奇抜さでは負けていない。
 嗚呼、きっと透明人間なんだ、そうに違いない。突っ込んだら面倒くさいことになることは目に見えているのでスルーした。
 鞄を定位置に置いて私の出方を伺っているような計三名の変質者に向き直る。

「お客様は三名様でよろしいですか?」

 ファミレスか。
 自分で自分に突っ込んだ。むろん心の中で。
 私の言葉にぱちくりと瞬いて、おそらく三人の中で親玉らしい白髪の麗人がそれはそれは綺麗な微笑みを浮かべる。

「…客としてもてなしてくれる、ということかな?」

 ……そういう、意味じゃない。けど、変な問答をする元気がない。もっというと時間も惜しい。

「他がいいなら善処しますよ、変質者のお三方」

 肩から力を抜いて息を吐き出す。結局昨日あのまま会社で3時間程度寝ただけだ。はやく布団に入れてほしい。
 変質者、という明らかに暴言に入る言葉に、またあの抜刀男が腰の刀を抜く体勢になっているがこれもうスルーでいいだろ。
 麗人が彼を手で制して前に出る。

「突飛な話かもしれないが、僕らは違う世界から来たようだ。
 原因は掴めえていないけれど元の世界に戻れるまでここに置かせてほしい。
 もちろん対価は払おう、金銭がないから肉体労働になるだろうけどね」

 なんとなく昨日出ていってない時点で予想は薄々していたけれど、なるほど、突飛な話過ぎてついていけない。
 いや、ついていく必要はない、か。
 こいつらを置くメリットはないにしても、デメリットがこれ以上増えなければそれでいい。男三人に対して女ひとり、実力行使は不可能だ。

「…いつから住み着いたか知らないですけど、私はほとんど家に帰らないので住み着くなら好きにしてください。
 最低条件は私の生活に干渉しないこと。肉体労働も金銭もいりません。私の邪魔をしない、それだけです。
 聞かれたことには答えましょう、必要なものも言えば与えましょう。
 でも私が自ら進んであなたたちを助けることはしない、これでどうですか」
「ほう、ぬしは優しいなァ」
「……」

 包帯が、しゃべった。
 失礼ながら視線が釘付けになった。
 ぱちりと目が合う。
 うぉ、この人目が変。異世界すげぇ。
 いや、そうじゃなくて、しゃべってもいいんだけど、思いのほか、

「訂正。そこの包帯の人、」
「貴様、刑部に何をさせる気だ」
「定期的に私とおしゃべりしてください」

「「「……は?」」」

 疑問符が三つ綺麗に重なる。しかしそんなものは今の私の耳には届かない。

「その声、すごい好み、癒し、癒し発見、デメリットどころかメリットやん、うんそうしましょう私それだけでいいっす」

 心の中で言ったつもりが口から出ていたけれど、気にしない。
 声フェチではなかったと思うが、何とも言えない落ち着く響きがする。一気に癒された。

「ひ、ひひ、物好きな。よかろ、ぬしの好きにしやれ」

 好きにしやれって、何この言葉回しめっちゃ好み。

「あー、今すごい幸せ、生きててよかったむしろ今死んでもいいわ」
「……まさか、吉継君の声ひとつで衣食住が確保できるとはね」

 色々と策は練ったんだけど、と零す麗人と、無言で刀から手を放す抜刀男と、奇抜極まりない包帯男、狭い1Kで奇妙な同棲生活が始まった。








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2014.04.14