夢話-夢小説の間-





活動時間は真夜中






 異世界人が家にいようがいまいがあまり関係ないほどの激務が2,3日続き、久しぶりに日付を跨がずに帰ってこれた。
 会社に泊まり込みもざら、帰れば帰ったで抜刀男以外は寝ている。何故か彼は初回買い物日和毎回扉を開けてくれるようになった。
 彼の社交レベル的に会話も何もあったもんではないのだが、私とて喋る必要がないなら静かに過ごしたい派だから全然構わない。

「お久しぶりですただいま帰りました」

 包帯と麗人に顔を見せれば、

「やぁ、おかえり」

 とにこやかに返してくれる麗人と、

「やれ、どちら様だったか」

 とふざける包帯と。元気そうで何より。

「家主っす、ワザとっぽいから許す、てかあああああもう今の声で疲れが吹き飛んだ抱き着いていいですか」
「やめい」

 がこっとティッシュの箱が飛んできた。角が額にクリーンヒットです。地味に痛い。だが次のクローンはきっとうまくやってくれるはず。

「大丈夫かい?」
「うぃっす、今日はそんなことしてる暇ないんだった。
 単位の概念覚えられました?買い物行きましょう。やり方教えます。まだお三方が起きていられるなら」
「われは行かぬ」
「ほい、じゃ、そっちのお二人、一緒に行きましょう。5分後に。
 お留守番さんは追加でほしいものあれば頼んどいて。私は面倒見ないから」
「あい、わかった」

 まぁね、服を支給してもね、包帯取らないんだから不審者極まりないよね。私も連れて歩きたくないわ。まぁ包帯取られて透明人間のまま歩かれても困るしね。
 こいつらはあくまで同居人。それ以上でも以下でもない。私へ干渉するなと公言した以上、こちらからの必要以上の干渉は不要だ。
 荷物と財布と蓄えを確認して、少し肌寒くなってきたのでマフラーを巻く。

「準備できまs…てないですね、うん、」

 振り返れば、ある意味準備万端なイケメン男性が二名いるわけなんだが、どうしてこうして…、

「刀を持つなと言いませんでしたか…」

 しっかりと腰に刀を携える抜刀男に頭が痛くなった。

「刀を持っていると捕まる、とは聞いたが、持って出るな、とは言われていない」
「屁理屈キター…」

 模造刀です、と言えば押し切れるだろうか。いやダメだ職質されたら真っ先に抜刀するぞこの男。今までの勢いからしてたぶん切り捨てて大問題になるぞ。
 こいつは捕まっても構わないが一緒にいると思われると私までしょっ引かれるんじゃないのこれ。まぁこの時間に職質なんてあるわけないのだが。

「……あなたの仲間と思われると私まで捕まる可能性があるので、それは迷惑です。
 十二分に離れて歩いていただけるなら文句は言いません」
「……どの程度だ」
「距離の単位って、尺とか寸とかですか?」
「ああ」

 スマフォを起動して変換ツールを探す。すぐに見つかったそれに20mと打ち込めば…あああ、なんかいっぱい単位出てきた。

「…十間(じゅっけん)、で通じなければ六十六尺」
「……」

 眉間に物凄くしわが寄っている。
 何の考察をしているのか知らないが、刀が必要なほど物騒な世の中じゃないんだけど…。
 いや、だめだ、そうだ、こいつら異世界の人だった。その辺の違いを説明していなかった。
 認識を改めて抜刀男を見る。

「一応言っておきますけど、この世界はモンスターとか魔物とか、いわゆる敵と呼ばれる存在に道端では遭遇しません。
 私みたいな貧弱女が真夜中に出歩いていい程度に平和です。出てみりゃわかりますけど明るいですしね。
 先日言った通り戦争もしていないので、武力行使する人間はほとんどいません。
 進んで怪しげな場所に入らなければまず大丈夫でしょう。
 ということで、刀持って出て離れて歩くか、置いていって近くを歩くか決めて下さい」

 できれば10秒以内で。
 時間制限は口の中まででとどめておいて、抜刀男の考察が終わるまでしばし待つ。
 外に出るまで何分待たせる気きだよこいつら…。

「刑部、貴様に預ける」
「あいわかった、気を付けていってきやれ」

 刀を包帯へ放るとさっさと案内しろ、とのたまった。
 ……礼儀くらいはしつけた方がいいと思うな。後々のために。
 上司に物申そうかと思ったけれど、今後の私の生活に支障はないのだから、と文句は飲み込んだ。

「たぶん2時間くらいかかるんで寝たかったらどうぞ」
「にじかん?」
「ちょい待ちで……一刻、で通じます?」
「あいわかった」

 距離と同様にスマホで確認して伝えればきちんと伝わったようだ。
 ひらひらと手を振られたのでそれまで静観していた麗人に行きましょうか、と声をかけて外に出た。








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2014.04.21